新型コロナまん延状況が収束すると、次はデング熱の持ち込み・持ち帰りが起こるかも

ウイルス感染症

   わが国も、ようやくワクチン接種が本格化しそうな雰囲気になってきた。まだまだ時間はかかりそうであるが、これまでに比べるとスピードを期待できそうな状況になってきている。

 このワクチン接種が進んでくると、欧米にみられるように自由を求める機運が一気に高まりそうである。新型コロナに対する基本的な対策、マスク、小まめな手洗いやアルコール消毒などがおろそかになりがちになると予想できる。

 政府も、経済優先ということで海外からのビジネスマンなど、渡航者の受け入れに積極的になることは必至である。

 ここで、懸念されることは、東南アジアで猛威を振るっているデング熱(重症化するとデング出血熱となり、死に至ることもある)である。タイでは、新型コロナの対策が実施され、ある程度の抑制を維持している状況ではあるが、デング熱患者数は新型コロナ患者のほぼ10倍にも達するとの報道である(2020年8月時点)。シンガポールでも、デング熱患者は過去最悪の状況と報道されている(2020年9月時点)。ただ、今年に入り、東南アジアにおけるデング熱患者数は大幅に減少している。おそらく、デング熱への基本的な対策(感染症によって、対策は異なる)の徹底が、東南アジアの各国で進められたことが挙げられる。

 デング熱は、ネッタイシマカと呼ばれるやぶ蚊の一種によって媒介され、感染が広がっていく。日本にはこの種の蚊はいないが、同じ役割を果たす蚊としてヒトスジシマカ青森県から南の日本各地に生息)がいる。2014年8月、海外渡航歴がないにもかかわらず、東京・代々木公園内で蚊に刺されてデング熱を発症し、その後も次々と新たな患者が現れ、160人にも達した。

 ネッタイシマカは熱帯地域に生息し、早朝や夕暮れ前に活発に活動し、吸血するので、この時間帯に蚊がヒトにデング熱の原因となるデングウイルスを感染させることになる。デングウイルスは、デング熱患者から吸血されると、蚊の体内でも増え、増えたデングウイルスは唾液腺の細胞に移る。このデングウイルスをもっている蚊が、次の人(デングウイルスに感染していない)を刺すときに、唾液中に含まれるデングウイルスを多量に注入するので、効率よく感染させることになる。

 デングウイルスには抗体で区別できる型が4種類(4血清型といわれる)存在している。厚生労働省からも、全世界で年間数千万人の患者が発生し、広い地域で大流行が頻発していることが紹介されている。現在の新型コロナ感染状況の改善が進むと、次に大流行する感染症候補としてデングウイルスが挙げられる。日本では「輸入感染症」としての位置づけで、あらかじめの対策が必要と思われる。




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