夏風邪と冬の風邪:風邪ひきは冬の定番だが、夏にも風邪と呼ばれる感染症がある

ウイルス感染症

 「夏風邪」とまとめて呼ばれる感染症は、エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、アデノウイルスに感染した場合に、風邪様症状がみられることからこのように呼ばれている。丁度これからの季節、6月末から夏にかけて流行する。

 コメ粒ほどの小さな水ぶくれ(水泡)が手、足、口にできる手足口病、また同じような水ぶくれが口の中の上あごの奥の粘膜にできるヘルパンギーナという感染症がある。

 どちらも、エンテロウイルスや、これに類似のコクサッキーウイルスに感染することが原因である。発熱を伴うことが多いが、それほどの重症になることは少ない。インフルエンザのように、毎年流行する感染症ではなく、数年ごとに流行する傾向がある。

 アデノウイルス感染によっても、夏風邪のひとつであるプール熱(プールの水を介してうつることが多いので、このように呼ばれるが、正式には、咽頭結膜熱)と呼ばれる感染症を引き起こす。のどや目の感染症で、のどの痛み、目の充血、発熱などの症状がみられる。

 ウイルスの分野では、エンテロウイルス属と総称的に呼ばれる分類があり、この中にはエンテロウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルスなどが含まれ、さらに急性灰白髄炎(小児麻痺)の原因になっているポリオウイルスも含まれる。エンテロウイルスやコクサッキーウイルスは、さらに多くの種類に分かれる多様なウイルス集団である。そのため、すべてのウイルスに共通の効果的な抗体が作られず、何回も感染してしまう傾向がある。

 アデノウイルスにも多くの型が存在し、咽頭結膜熱の原因となっているアデノウイルスのほか、流行性角結膜炎(はやり目)の原因になっているウイルスも存在する。このような夏風邪の原因となるもの以外に、急性胃腸炎を起こすもの、また呼吸器に感染し、発熱やのどの痛みだけではなく、肺炎や気管支炎の原因にもなる(下記の冬の風邪の一種)。

 これら、エンテロウイルス属のいろいろなウイルス、その中の、アデノウイルスも消化器に感染するものが多く、ウイルスの外側のエンベロープ膜(脂肪層)を持っておらず、したがってアルコール消毒が効かないため、次亜塩素酸ナトリウム液での消毒が必須である。

 夏風邪とは異なり、一般的に思い描く「風邪」という感染症は冬の病気である。この風邪の原因となるウイルスも、現在、世界中に広がっている新型コロナウイルスSARSCoV-2)の仲間のコロナウイルス(一般にヒトコロナウイルスと呼ばれているもので、4種類のウイルスが知られており、冬の風邪の10~20%はこのウイルスの感染が原因と言われている。他に、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、それに、現在大流行しているRSウイルス(通常は冬場の感染症で11月~12月がピークと言われていた。しかし、2016~2019年では夏場の感染症となっていた)などがある。




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