この三大感染症によって世界で年間250万人以上の命が奪われている。2007年7月開催の「G8九州・沖縄サミット」でサミット史上初めて感染症対策が主要議題として取り上げられ、世界HIV/エイズ・結核・マラリア対策基金設立につながった。
結核とは
- エジプトのミイラからも結核の痕跡が見つかることから、結核は人類の歴史とともにある古い病気である。日本では、明治以降の産業革命による人口集中化が原因となって蔓延し、「国民病」といわれてきた(国立感染症研究所:https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/398-tuberculosis-intro.html)。
- 第二次世界大戦後後に、結核対策の切り札となる抗生物質(ストレプトマイシン)が普及し始め、結核による死亡例は激減した。
- 日本の結核患者の多くは高齢者で、70歳以上が60%にも及ぶ。これは、恐らく戦後の結核蔓延状況下で、現在の高齢者世代が子供のころに知らぬ間に感染し、その後も自覚症状もなく成人に至るまで健康に過ごしてきたが、高齢期になって免疫力の低下とともに、潜伏していた結核菌が活動し始め、結核の発症となったと考えられる。
- 実際、同様のことが起こっている途上国ではHIVに感染した人(まだ若い世代でもHIVに感染すると後天的に免疫抑制状態になるので、高齢者と同じように、免疫低下は引き起こされるので)に結核症状が爆発的に増えていることからも、小さいころに感染し、潜伏していた菌の活動で、近年でも結核患者が多くなっているのではないかと思われる。
BCGワクチン
- 小児のころの結核感染を予防する効果があるとして開発されたワクチンである。このワクチンは、ウシ型の結核菌を弱毒化(有名なフランスのルイ・パスツールの発明)したもので、弱毒性の生ワクチンである。しかし、成人の結核発症を抑える効果に対しては期待できない。
- 2005年3月までは、乳幼児期にツベルクリン反応(ツ反;ヒト型の結核菌を培養した際の培養液から得られた結核菌由来のタンパク質で、ドイツのロベルト・コッホの発明)を行って、反応が陽性であれば「すでに結核菌に感染している」として、BCGワクチン接種は不要と判定する判断基準になっていたが、現在ではツ反は使われなくなっている。
(「大切な家族を感染症から守る本」<生田和良・著、講談社>)
たいせつな家族を感染症から守る本
細菌とウイルスの違いを知る、人のからだのしくみを知る、ライフステージによって出会う感染症の違いを知る。どこでどのような感染症が待ち受けているかをあらかじめ想定できれば、感染症との共存生活はうまくいく。